岩崎良美

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武甲山 日帰り登山|秩父・表参道コースを初心者目線で。名物「水運び」と絶景を正直レポート

2025.05.05

埼玉県・秩父にそびえる武甲山(ぶこうさん/標高1304m)へ、表参道コースで日帰り登山に行ってきました。秩父の市街地から見上げると、北側だけがゴッソリと削られた独特の山容。「神話の山」でありながら「石灰岩採掘の山」でもあるという、ちょっと不思議で考えさせられる一座です。

距離は約10km、累積標高は約850m。低山とはいえ歩き応えはしっかりあります。この記事では、横瀬駅からのアクセス、山頂トイレのために水を背負う名物「水運び」、削られ続ける北側の歴史、そして御嶽神社からの絶景まで——初心者でも登れるのか、コースタイムや注意点とあわせて正直にレポートします。

コース概要

アクセス:横瀬駅からタクシーで登山口へ(バスはありません)

東京方面から向かうなら、まず池袋駅から西武線の特急「ラビュー」に乗るのが早くて快適。約80分で横瀬(よこぜ)駅に着きます。

ここで大事なポイントが一つ。横瀬駅から登山口の「一の鳥居」までは約6km離れていて、路線バスがありません。歩くと遠いので、駅からはタクシーで約15分が現実的です。私たちもタクシーを使いました。下山後に駅へ戻るときも同じで、帰りの交通手段(タクシーを呼ぶ手配など)まで考えておくと安心です。

名物「水運び」——山頂トイレのために水を背負って登る

武甲山ならではの体験が、登山者による「水運び」です。

登山道の途中(不動の祠があるあたり)に、空のペットボトルが置かれた水場があります。これは山頂のトイレで使う水が不足しているため、登れる人が少しずつ山頂まで運んでください、という協力のお願い。私も「自分がトイレを使う分くらいは」と思い、2Lのボトルを一本ザックに入れて登りました。

正直に言うと、水は重いです。2Lで約2kg、最初は平気でも後半の急登でジワジワ効いてきます。だからこそ覚悟していたよりは、という感じでしたが、無理は禁物。自分が背負える範囲(1〜2L)で十分ですし、しんどければ途中で量を減らしてもいい——「最悪、中身は水だから」と気楽に構えられるのも気が楽でした。山頂のトイレ脇のタンクに注ぎ入れたときは、ちょっとした達成感があります。これから登る方は、参加するなら空容器が用意されているので手ぶらでOK。背負う重さだけ心づもりしておきましょう。

「神話」と「産業」が重なる山——石灰岩採掘で変わり続ける武甲山

武甲山は古くから秩父盆地を見守る神の山として信仰されてきました。山名の由来には、ヤマトタケル(日本武尊)が東征の折に自身の武具を山頂の岩穴に納めて関東平野の鎮護を祈った、という伝説が伝えられています。「神話の山」と呼ばれるゆえんです。

一方で、武甲山を検索すると「かわいそう」という言葉が出てくることがあります。理由は北側斜面の石灰岩採掘。北斜面には日本有数の大規模な石灰石鉱床があり、明治時代からセメント原料として採掘が続いてきました。市街地から見える北側は段々状に岩肌が露出し、採掘前に1336mあった山頂の標高も削られて、三角点が移設されるほど山の姿が変わっています。現在の最高所は山頂西側の1304m地点。御嶽神社も、かつて採掘の影響で安全な場所へ移されたそうです。

実際に歩いてみて感じたのは、これは単純に良い・悪いと言い切れないということ。私たちの生活に道路もコンクリートも欠かせず、セメントは必要なもの。一方でこの山には希少な石灰岩地特有の植物も多く、それが失われつつあるのも事実です。近年は各社が協調して採掘区域や時期を調整し、緑化や植生復元にも取り組んでいるとのことですが、採掘は今も続いていて、景観と信仰のあいだで揺れ続けている山——そんな背景を知って登ると、一歩一歩の見え方が変わります。

大杉広場から山頂・御嶽神社の絶景へ

序盤は沢の音が気持ちいいコンクリート・林道歩き。15丁目を過ぎたあたりから本格的な参道になり、青龍の祠で癒され、大杉広場で一息つきます。ここの大杉は本当に迫力があって、登っている最中から「あの一際大きい木はなんだろう」と気になっていたほど。節くれだった幹を見上げると、思わず足が止まります。

大杉広場から先は急登を一気に登り切って山頂へ。武甲山御嶽神社で参拝を済ませ、展望台へ向かうと、秩父盆地を見下ろす絶景が広がります。山頂が見えると俄然元気が出るのは、登山あるあるですね。

注意したいのは気温の変化。私が登った日は、登りでは蒸し暑くて17℃ほど、汗だくでしたが、山頂から稜線にかけては風が出て一気に冷え込み、14℃まで下がりました。標高はそれほど高くなくても、山頂は風が抜けて体が冷えます。脱ぎ着で調整できる重ね着+一枚羽織れる防寒着は必ず持っていきましょう。

下山は周回コースで(道迷いに注意)

下山は来た道を戻らず、小持山方面からシラジクボ分岐を経て表参道に合流する周回コースを選びました。変化があって楽しい一方で、ここが一番の注意ポイント。分岐が多く、砂利の作業道や紛らわしい広い道に引き込まれやすく、正直に白状すると私たちも何度か道を間違えて引き返しました。

ピンクやオレンジのテープが目印に付けてくれてあるので、こまめにテープと地図・GPSアプリで現在地を確認するのが安全です。砂利道は方向の目印が乏しいので特に要注意。途中には持山寺跡などもあり、最後はつづら折りの樹林帯をひたすら下って一の鳥居へ戻ってきます。

もう一つの正直な反省は、下りで脚に力が入らず転びそうになったこと。登りで脚の筋肉を使い切ってしまうのが原因だなと痛感しました。下りに不安がある方は、トレッキングポールを使う・日頃から脚の筋トレをしておくと安心です。

まとめ:初心者でも楽しめる?下山後はわらじかつ丼

結論から言うと、武甲山はある程度歩ける初心者なら十分に楽しめる山です。標高1304mの低山ながら、約10km・累積850m・コースタイム約5時間と歩き応えは本物。急登と下りの周回でしっかり鍛えられます。逆に言えば、まったくの登山デビューにはやや骨太なので、近場の低山を何度か歩いてからのほうが安心して向き合えます。

ポイントを整理すると——

そして下山後のお楽しみは、秩父名物のわらじかつ丼。はみ出すほど大きなカツが「わらじ」の由来だそうで、味が付いているのでそのままパクッといけます。この日は下山後に羊山公園の芝桜も見に行って、まるまる一日観光した気分。山も歴史も、グルメも絶景も詰まった、欲張りに楽しめる秩父の一座でした。

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